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2002年初め頃から中・東部赤道太平洋の海面水温が徐々に上昇を始めていたが、11月に21世紀最初のエルニーニョ現象として「成熟期」を迎えた。図1は、宇宙航空研究開発機構が開発した改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)から推定した、2002年11月の全球月平均海面水温である。AMSR-Eは2002年5月に打ち上げられたNASAのAqua衛星に搭載されており、海面水温の推定アルゴリズムは気象研究所柴田氏のものを使用した。図1の黒枠内を拡大した範囲が図2の領域となる。
図1:AMSR-Eから推定した2002年11月の全球月平均海面水温図2:拡大画像(TRMM PR, AMSR-E海面水温, 海面水温の平年値からの差)図2の上段は、熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載の降雨レーダ(PR)によって観測された、同じ月の月積算降水量である。TRMMは日米共同のミッションで、PRは日本が開発した世界初の衛星搭載型降雨レーダである。図2の中段はAMSR-Eによる月平均海面水温である。これらを比較すると、海面水温の高い(橙〜赤色)領域と、降水量の多い領域(黄〜赤色)がよく一致していることがわかる。また、図2の下段は海面水温の平年値からの差を示しており、通常の年に比べて、中部赤道太平洋で海面水温が2〜3度高くなっており、また東部赤道太平洋上でも1.5度程度、海面水温が上昇していることがわかる。
前回のエルニーニョ現象(1997-98)は、観測史上最大の規模であったため、中部から東部の熱帯太平洋の広範囲で4〜5度の海面水温の上昇が見られたが、今回は比較的規模が小さく、また海面水温偏差のピークが中部に位置するなどの特徴が見られる。海面水温の分布の変化は、熱帯の対流活動の位置を変化させるため、雨の分布が大きく変わる。このために、エルニーニョ現象やその逆のラニーニャ現象が起こると、干ばつや大雨などの異常気象が世界各地で多く発生する。
なお、エルニーニョの発達の様子については、EORCのTRMMのホームページにも記事が掲載されている。さらにAMSR-Eの日平均ブラウズ画像(輝度温度や物理量)を掲載したホームページも新たに公開されたので、そちらも併せてご参照いただきたい。
関連リンク
1997/98エルニーニョ関連
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