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AMSRやAMSR-Eのデータを利用するために、プロダクトやアルゴリズムの概要と、データ取得方法や利用可能なツールについて紹介します。

標準プロダクト利用上の注意事項

AMSR-E 89GHz A系受信機データ欠損に伴うアルゴリズム変更について

AMSR-E 89GHz A系受信機データの欠損に伴い、降水量および積雪算定アルゴリズムに対してプログラム変更を行いました。変更は、アルゴリズム開発主任研究者との調整・協力により実施しました。降水量はDr. Guosheng Liu (フロリダ州立大学)、積雪はDr. Richard Kelly (NASAゴダード宇宙飛行センター)によりアルゴリズム開発が行われています。変更の概要とプロダクトへの影響は以下のとおりです。

1. プログラム変更の概要
降水量および積雪算定アルゴリズムについて、それぞれほぼ同様の変更を施しました。変更前は89GHz A系・B系の輝度温度を個別に扱っていましたが、低周波観測点を中心として、半径12.5kmの領域に含まれる89GHz A系・B系両方の輝度温度を平均し、物理量算出に用いるよう変更しました。これにより、変更前は89GHz A系の輝度温度が欠損の場合は物理量が算出されませんでしたが、変更後はA系が欠損してもB系だけで輝度温度平均値が求められるため、物理量算定が行われます。
2. レベル2プロダクト (降水量、積雪水量)
89GHzのB系は、A系よりも地上距離で約15km後方を観測していること、レベル1Bプロダクトに含まれるデータの観測幅がA系よりも両走査端でそれぞれ約30kmずつ狭いことから、観測領域が若干異なります(図1)。このため、B系のみの輝度温度を用いて処理した場合、降水量および積雪のレベル2プロダクトでは、1走査あたり両端にそれぞれ1点程度、ファイル終端に1ライン程度の欠損が生じます。これは全体の1%以下に該当します。
降水量プロダクトについては、主に89GHz輝度温度の平均化の効果により、プログラム変更前と比較して算定値が1-2%程度低下しますが、実用上影響は小さいものと考えられます。
積雪プロダクトについては、現在は89GHz 輝度温度を推定に使用していないため、算定値に変化はありません。
3. レベル3プロダクト (降水量、積雪水量)
変更後にレベル2プロダクトで発生する欠損域のため、グリッド内のサンプル数が減少する領域がありますが、平均値への影響は小さいと考えられます。
降水強度算定値の変化についてはレベル2プロダクトと同様です。
4. まとめ
AMSR-E 89GHz A系受信機データの欠損に伴い実施した降水量および積雪算定プログラムの変更点と、プロダクトへの影響を記述しました。変更されたプログラムによる処理は、欠損発生以降のデータについてのみ実施される予定です。全データに対する再処理は、2005年2月に予定しているプロダクトバージョンアップ時に実施します。この際の物理量算定プログラムは、更に変更される可能性があります。
B系はA系と異なるオフナディア角を持つため、衛星進行方向に15kmほど後方を観測している。A系・B系の連続した3走査が揃うことにより、衛星進行方向に約5kmのサンプリングを実現している(正確にはA→Bで6.0km、B→Aで4.1km)。この関係は走査中央付近でのみ正確であり、走査端に近づくに従いA→B間の距離は狭くなり、やがて交差し、走査端では逆の関係となる。
AMSR-E 89GHz A系受信機データ欠損に対するバージョンアップ時の対処について
AMSR-E 89GHz A系受信機データ欠損に伴い、降水量及び積雪算定アルゴリズムのプログラム変更を行い平成16年12月21日よりプロダクト提供を再開いたしましたが、平成17年3月1日のAMSR-Eプロダクトバージョンアップに伴い、本件に対して恒久対策を実施しました。
前回のプログラム変更では、低周波観測点を中心として半径12.5kmの領域に含まれる89GHz A系・B系両方の輝度温度を平均し物理量算出に用いましたが、より実際のビームパターンに近いガウス分布を用いて平均する方法に変更しました。また、外挿処理を行うことにより、前回の変更で生じていたレベル2プロダクトのファイル端でのライン欠損は無くなり、レベル3プロダクトの平均サンプル数減少も解消されました。
バージョンアップに伴いプロダクトは全数が再処理されますので、全期間のデータについて同一のプログラムが適用されます。但し、89GHz A系受信機データ欠損が生じた2004年11月4日以降は、自動的にB系受信機データだけを用いて物理量算出が行われます。