図は、2003年4月から始まった
GLIの連続観測による最初の月平均海洋プロダクトです。このプロダクト(クロロフィルa濃度
(A)、海面水温
(B)、光合成有効放射量
(C))と海洋生物モデルを用いて、海洋植物プランクトンによる基礎生産力
(D)が推定できます。海洋の基礎生産力とは、海洋植物プランクトンが窒素・リンといった栄養塩、太陽光を得て光合成し、海水へ溶け込んだ二酸化炭素を取り込み固定する「単位時間単位面積あたりの炭素量」のことをいいます。
中高緯度帯の沿岸域で基礎生産が高くなっています。この海域では、河川水や岸に沿って流れる海流による上昇流(沿岸湧昇)によって栄養塩が豊富に供給されるため、基礎生産が高くなると考えられています。ペルー沖から赤道に沿って東西に細長く伸びる海域でも基礎生産が高くなっています。この海域では、西向きの貿易風によって上昇流(赤道湧昇)が起こり、深層から豊富な栄養塩が周辺海域よりも多く供給されることによって植物プランクトン濃度が増加し、基礎生産が高くなります。また、中高緯度帯では日射の増加に伴い4月頃に植物プランクトンのブルーム期(年間で最も植物プランクトンの増加が大きい時期)を迎えます。太平洋・大西洋における北緯30-40度付近の高い基礎生産は、この植物プランクトンブルームの影響によるものと考えられます。
海洋の基礎生産力がどのようになっているのか理解することは、地球温暖化に関わる海洋の炭素循環の解明、さらに植物プランクトンは食物連鎖を通じてイワシやマグロなど多くの魚類のエサとなるため、水産資源の保護及び管理等にも非常に重要です。