2003年5月28日
緑のオアシスがつくる絹の道 - シルクロード
この画像は2003年5月6日に
GLIが1km分解能で中国西域を観測したものです。植生が緑色、水が暗紫色〜黒色となるように処理されています。
北は天山山脈、南は崑崙山脈に囲まれ、面積約34万平方キロと日本の面積に匹敵するほどに広大なタクラマカン沙漠が画像の中央に見えます。画像左上に緑色に写るのは、ステップと呼ばれ西はカスピ海にまで達するカザフスタンの大草原地帯で、北には細長いバルハシ湖が見えます。また、画像左下に見える一面の雪化粧は平均標高4000mを越える山岳地帯で、「世界の屋根」と形容されるパミール高原と世界第2の高峰K2(中国名チョゴリ、標高8611m)を頂くカラコルム山脈です。
南北の山脈からタクラマカン沙漠に向けて流れ出る雪解け水が伏流水となり、地上に湧出したところでオアシスを形成している様子が、山脈に沿った緑の植生として観測されています。植生の目立つ地域にはカシュガル、ホータンなどのウイグル族のオアシス都市があります。春の雪解け水の影響は沙漠の内部にまで及んでおり、画像中央を見ると、沙漠が水で潤されて薄赤く変色しているほか、ホータン川が流れを回復している姿が確認できます。
これらのオアシスを東西に結ぶ道は、ラクダの隊商が諸国の文物を伝え各地の文化に多大な影響をもたらした「シルクロード」として有名であり、古来より幾多の旅人が足跡を残してきました。唐代初期(西暦7世紀前半)に玄奘三蔵(三蔵法師)が仏教の経典を求めてタクラマカン沙漠を横断、ガンダーラを越えてインドまで到達した大旅行は特に有名です。
天山山脈の雪解け水を集めてタクラマカン沙漠の北辺を東に流れるタリム川の終点には、探検家ヘディンの著作「さまよえる湖」として知られるロプノールが満々と水をたたえていましたが、20世紀後半に大規模な農地拡大に必要な灌漑用水をタリム川から取水したため、いつの間にか湖そのものが消滅してしまいました。このような大規模な環境変化を監視するには地球の緑を守る宇宙の目、地球観測衛星が唯一の手段であり、その重要性はますます高まっています。
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